ラスカルはぼくの友だち?

先週は動物取扱業責任者研修に行ってきました。
毎回2つのテーマで講義が行われ、今回の講義は「動物の感染症について」と「動物取扱業における災害時の危機管理について」で、どちらも興味深く勉強になりました。

たまたまその前日に娘の友人が遊びに来ていて「あらいぐまラスカル」の話題になり、「スターリングは野生動物を拾ってきて、リードも付けずに放し飼い、飼いきれなくなったら森に遺棄するとかとんでもないヤツだな~」というような話をして笑っていたので、特に人獣共通感染症の話はタイムリーでした。

「あらいぐまラスカル」は、私はリアルタイムで観た昭和のアニメですが、若い人でもキャラクターグッズなどで見た目は知っているかと思います。バラエティ番組の「昔の名作アニメ」的な特集には大体登場してきます。
Youtubeをちょっと観て懐かしくなったので原作の方を借りて読んでみました。

「はるかなるわがラスカル」は著者のスターリング・ノース自身が11歳の時に森で捕獲したアライグマの子供を翌年の春に森に返すまでのお話です。

1910年代アメリカのウイスコンシン州、スターリングは既に7歳のときに母親を亡くし(アニメでは入院している)2人の姉と兄も独立したり、戦争に行って家を出てしまい、父親も仕事で不在がち。。と何だか寂しい生活をしています。

そんなスターリングですが結構自立していて、野菜を売ってお小遣いを稼いだり、ひとりで川にナマズやブラックバスを釣りに行ったり、冒険好きの友だちや飼っているたくさんの動物たちのおかげで悲壮感はなく、毎日楽しそうです。
そして、もちろん子供なので仕方ありませんが、今読むとスターリングの動物飼育はツッコミどころが満載です。

・アライグマの巣穴を掘り返し、母親グマと4匹の子グマを捕えようとするも、1匹(ラスカル)しか捕獲できずに逃げられてしまう。
(アニメ版では子グマはラスカル1匹だけですが、やはりオスカー(友人)の制止を聞かずに母グマを捕まえると言い張り、スターリングがモタついているうちにハンターが来て母グマを撃ち殺してしまう)
・室外放し飼い(後に畑を荒らすようになり、苦情を受けて首輪と紐を付けて檻に入れる)
・人間の食卓で食事させる
・角砂糖とかソーダ水あげまくり
・セントバーナード・カラス・スカンク4匹・ウッドチャック・ネコ数匹を飼育、互いに接触させている
・スカンクは近所から悪臭の苦情を受け、森にリリース
・ジャコウネズミを何度も森から捕獲して1年ほど飼って森にリリース
・最後はラスカルが檻を抜け出してサーマン牧師(アニメ版では牧師ではない)の鶏舎を荒らし、射殺すると脅されて森にリリース

今テレビ放送されていたら動物愛護や公衆衛生の点から炎上しそうな内容です。
(捕獲シーンは18:00頃から)


ただインターネットや本で情報を得られる現在と違ってスターリングが野生動物の飼育方法や難しさを事前に知る方法はなく、他の大人たちも指摘しません。
まあ、子どもの頃に衝動的に生き物を捕まえてきて失敗してしまうという経験は誰にでもありますよね。むしろ棄てられている動物を無視するような子供だったらちょっと寂しいような。。
試行錯誤(&大人のフォロー)のなかで生き物の飼育の難しさや繊細さを学んでほしいとも思います。生き物側からしたらいい迷惑なんですけどね。

私はいい大人なのに、娘が拾ってきたという理由でうさぎを飼い始め、不正咬合にしてしまったのですからスターリングにとやかく言える立場じゃありません^^;

唯一、学校の担任のホエーレン先生は狂犬病の知識があり、ラスカルに噛まれた同級生のスラミーがパストゥール治療(狂犬病ワクチン)を受けられること、ラスカルを2週間監禁して狂犬病の兆候をが出るか観察するように注意しています。

スターリングはたまたま飼育していた動物が感染症を持っていなくてラッキーなのでした。


「アライグマが手に負えなくて手放す」という話にもかかわらず、CMの影響もあってか、90年代以降は日本でもアライグマを飼う人が急増します。その後遺棄されたり逸走したアライグマの被害が今でも問題になっているようです。(現在では無許可の飼育が禁止されているので捕獲数や被害は2010年あたりをピークに減少しています)

ラスカルの緊張感のない顔のせいでしょうか?
あの顔でスゴまれても余裕で勝てそうですもんね。

しかも、原作でのラスカルも「大好きな食物をやり、やさしい言葉の一つもかけてやれば、それでもうだれの友だちにもなった」とあるほど友好的な性格です。1年近く飼っている中で、ラスカルが自分から人間を攻撃するという描写もありません。

何だかよくしつけられた犬みたいで、飼育もいけちゃいそうな気がします。
おそらくラスカルは比較的おとなしい個体なのか、放し飼いや、大きい檻で飼われていたのでストレスもなくおっとりした性格でいられたのでしょう。

昔、子供が借りてきた児童書で、ペットショップに「猫みたいなもんですよ。餌はお菓子」と言われてアライグマを飼った著者が大変な目に遭うという話があり、その中で何年も檻に入れっぱなしにされている近所のアライグマが、ストレスによる常同行動からかマスターベーションにふける、といった記述がありました。

(ラスカルで想像した人、シュール過ぎます)

ストレスの多い環境だとますます問題行動が増えて飼いづらくなるので、愛情を持って接するのは根気がいるでしょう。
狭い日本の住宅で飼い殺しにされたアライグマを想像すると泣けてきます。

現在は、アライグマは攻撃的で懐かない、大変飼育が難しい動物なことは周知されていますが、当時はまだ飼育法を調べる手段があまりなかった上に、飼育した人の失敗談もまだ表に出てきていない時だと思うと、飼育した人にも多少は同情しますが。(遺棄はNGですよ)

人間のエゴのせいで不幸になるのは圧倒的に動物たちです。
これから何か飼おうとする人は「飼育方法」よりむしろ「失敗談」を調べた方が参考になるかもしれません。何事も反面教師の方が学ぶことは多いです。
人間に振り回された生き物が身をもって教えてくれた教訓を読み取って、今後のペット達の幸せに行かせたら、犠牲になった子達も少しは浮かばれるのではないでしょうか。

参考資料(HP)
あらいぐまラスカルwiki
環境省HP「アライグマ防除の手引き」
ぜったいに飼ってはいけないアライグマ

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