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大野さんとラットパークの仲間たち

先月末のことですが嵐が活動休止を発表したときの5人の記者会見をご覧になったでしょうか。
重苦しい内容かと思いきや、まれに見る和やかな雰囲気のいい会見でしたよね。

これまでの1年半の間、今後の方針を話し合う中で、他のメンバーに「最後まで笑っていよう」と言われたときに「嵐のメンバーでよかったなあ」と感じたと語る大野さんを見て、つい私もウルッと来ましたし、大野さんが答えにくそうな鋭い質問にはすかさず他のメンバーがフォローに入って対応する様子は見ていて爽やかな気持ちになりました。

ニュースを知ってショックを受けたファンの人達も、この会見を見てあらためて嵐を応援して行こうと思ったのではないでしょうか。

この会見を見ながら私はラットパークという実験のことを思い出していました。


ラットパークは1970年代にのカナダ人心理学者ブルース.K.アレクサンダー博士が行った、薬物の依存性を調べる実験です。

麻薬には依存性があることは当たり前に知られていますが、その原因は19世紀には「意志の弱さ」にあると考えられ、20世紀になると麻薬自体の科学的な構造にあることがわかってきました。しかし、アレクサンダー博士は依存症の原因は薬物自体の依存性ではなく、孤独やストレスなど周囲の環境によるもので、その苦痛を軽減するために人は麻薬に手を出すのではないかと考えました。

そこでラットを1匹ずつ入れた18✕25cmの周囲の見えない実験用ケージと、その200倍の広さの囲いの中に充分なエサやおもちゃと共に16~20匹のラットを入れた「ラットパーク」を用意しました。それぞれに普通の水とモルヒネ入りの水を用意し、モルヒネを混ぜた水は苦いので砂糖を混ぜて甘くしました。

実験用ケージのラットは砂糖を減らしていってもモルヒネ入りの水を好んで飲むようになり、ラットパークのラットはどんなに砂糖を入れてもモルヒネ入りの水を嫌がりました。そして実験用ケージではモルヒネに依存性を示すようになったラットも、ラットパークに移すと普通の水を飲むようになったというのです。

この実験は、麻薬依存症の原因は麻薬の依存性よりも環境要因が大きいことを示しています。

※もちろんアレクサンダー博士は麻薬の構造的な依存性も認めています。


人間の場合ケージに入って生活することはないのですが(刑務所に入っている人は置いといて。。)有名人がひときわ不自由で不便な生活環境なのは想像に難くありません。自分で選んだ職業とはいえ、アイドルが恋愛禁止にされたり、外出しても一挙一動を監視されたりとケージラットのような窮屈さです。有名税、なんて言葉もありますけどメンタルを削ってまで払いたくないものです。

海外ではアルコールや薬物のOD(過剰摂取)や依存で亡くなってしまう有名人が多く、ニュースを聞くたびに、この人はケージラットのような気持ちだったのかなと思い悲しくなります。(もちろん「不自由な生活」以外にも各々に他の原因もありますが)

人間はラットとは違いますから食べて遊んでいれば幸せというものでもなく、快適な生活環境もそれぞれ違います。常にそばに誰かいないと不安な人から一人の時間がないと耐えられない人、ネットで炎上したり叩かれてもケロッとしている(ように見える)人から他人の評価が気になって本来の自分を押し殺してしまう人、家庭内の人間関係が一番のストレスになるときも多く複雑です。

私は「すぐに会える距離に浅い話も深い話もできる、信頼できる友人や親類がいる一人暮らし」くらいが自由であって孤独ではない快適なラットパークかなと感じるのですが、皆さんはいかがでしょうか。


大野さんの細かい心理状態は解らないですが「自由に生活してみたい」「一度立ち止まって自分を見つめ直したい」という気持ちをもってメンバーに相談を持ちかけたときの大野さんは相当参っていて、生活の満足度が低かったのだと想像できます。
同業者・同世代の悩みを共有できるメンバーに相談したのは素敵な選択でした。

それにしても大野さんは「事務所を辞めないなんてことは許されない」と考えたり、メンバーに何度も話し合いを持ちかけたりと、とても生真面目で責任感のある人です。
今まで「こんなぼ~っとした人が何故リーダーに?」と思っていましたがきっと信頼できる筋の通った兄貴なのでしょう。

他のメンバーもそんな大野さんが思いつめているのを見て真剣に受け止めて最善の解決法を模索してくれたのではないでしょうか。
絆が強まった仲間達との会見での大野さんは案外晴れやかな表情で、少し以前より開放されている気がしました。

休止中は自由な生活を満喫できますように。

参考資料(HP)
◎wikipedia(ラットパーク)
◎Rat Park drug experiment comic about addiction