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ベジタリアンになりたい?2

昨年に引き続き、今年も11月4日にoxbowとカワイのセミナーに行ってきました。講義をしてくださったのは1997年から香港で獣医師をしているイギリス人のDr. Tigerさん。
講義の内容は歯科疾患だけでなく、全般の飼育指導的なものでした。
香港と日本のペットとは飼育環境が似ていて、夏はとても暑く家賃も高いのであまり大きくないマンションで大家族で住んでいるというパターンが多く、住宅環境も割と近いかも。夏場のペットの生活エリアの温度管理についてのアドバイスをすることも多いそうです。
その他にも歯の異常を示す兆候について(唾液分泌、食欲低下、体重減少、フンの異常、頚部のシコリ、被毛の異常)、顔を正面から触れて顎の腫脹や眼球の位置の異常をチェックすることが早期発見に繋がるというようなお話は興味深かったです。飼育書やネットの飼育方法などに書いてありますのでもう皆さんご存知ですね。

昨年のコントラフリーローディングの講義の方が目新しさがあったかな。コントラフリーローディングは、苦労して食べものをとらなくてもいいのがペットのメリットなのに「ただで食事が出てくるなんて退屈でストレスになる」という考え方。本末転倒じゃどこまでいくの動物福祉、といった面白さもありました。今のペットは人間が羨ましくなるくらい優遇されてたりしますからね。

講義内容と全く関係ないのですが私が気になったのはDr. Tigerさん、15歳のときからヴィーガンだと言うことです。
理由まではわかりませんが獣医さんなので動物愛護目的か、もしかしたらアレルギーなどに悩んで始められたのかもしれません。いずれにせよ若いときから美味しいお肉の誘惑に負けず(?)30年以上は続けてるのは尊敬してしまいます。
ヴィーガンに興味があるという人も増えていると思うのですが「栄養不足などで健康上の悪影響はないの?」というところが気になりませんか。
でもDr. Tigerさんを見る限りではツヤツヤしてとても健康そう。。健康不安はないなと思いました。

最近は日本でもベジタリアンやヴィーガンは増えているようです。家の近所にもヴィーガンカフェがあるので昨日娘と食べに行ってみましたが、思った以上にボリュームがあって美味しかったです。

ファラフェルのプレートと2種の野菜カレーのプレート。ファラフェルはひよこ豆で作った中東風の揚げ物で肉団子みたいな味でした。

wikipediaの表をみると2014年の時点で日本人の4.7%(ヴィーガン2.7%)、リンク元のアニマルライツセンターのページでは10代のヴィーガン率が9%となっています。10代の約1割も? 凄いけど私の周りに1人も居ない笑。どこに集中しているのやら。
確かに最近の若い人は動物愛護や環境問題への意識が高そうですし、農耕民族で精進料理の文化もある日本人にはもともと菜食主義は馴染みやすいのかもしれません。

ベジタリアンをやる理由も人それぞれ、日本人では少ないですが宗教上の理由や、体質改善など健康上の理由、動物愛護の倫理的な理由、環境問題(メタンガスの排出を減らす、森林保護目的)などなど。

「マツコの知らない世界」にも出演された元東大教員フルーツ研究家の中野瑞樹さんは「自らの身体で実験するため」にフルータリアンを9年間も続けています。(現在も記録更新中)
砂漠の緑化の研究をされていたそうなので環境保護的な理由もあるかもしれません。
果菜(トマトやキュウリなど)も食べているようですが、水も飲まず、必要な水分はフルーツから摂取し、塩分が不足してしまうのでメロンの皮などをぬか漬けにして塩分補給をしています。
みかんのお陰で骨密度も高いらしいし、中野さんの腸内には空気中の窒素をタンパク質に変える菌がいるとかいないとか。
今後も体に支障がなければ生涯フルータリアンを続けていくつもりで、亡くなった時は献体するそうです。
亡くなってからも研究者魂を貫くのがカッコいいです。


最近はベジタリアンも細分化してきて緩いのからストイックなものまで様々。

 

さて乳製品と卵と蜂蜜はなぜ別扱いなのでしょうか。

◎乳製品に関しては乳牛の過酷な労働環境や妊娠出産を人為的に繰り返させること、チーズの製造に仔牛の胃から採ったレンネット(凝乳酵素)を使っていることなどが理由です。乳製品を摂るラクト・ベジタリアンもレンネットは食べません。
ただレンネットは現在はあまり使われておらず今は90%は植物由来か微生物(カビなど)から作った微生物レンネットが使われているようです。

◎卵に関しては身動きもとれない狭いバタリーケージでの劣悪な飼育環境や、レグホンのような食肉に適さない種類のニワトリのオスは生まれて間もなく選別されて機械にかけられて処分されてしまうことが問題視されています。
私は今まではあまり気にしていなかったのですが、最近この動画を見て相当気持ち悪くなったので卵やめたい意識が俄然強くなりました。
※有名な動画みたいですが残酷なので気をつけて。

調べてみると海外では2016年にドイツ・ドレスデン工科大学とリトアニア・ヴィリニュス大学の研究チームが、孵卵器で暖めはじめて4日めの有精卵にレーザーを照射して雌雄判別する技術を開発したり、アメリカの卵の95%を生産している鶏卵生産者団体(UEP)が、2020年までにオスの雛の殺処分撤廃を目標にしていたりと、ヒヨコくん達の悲惨な状況を改善しようという動きが進んでいます。
かたや日本の農林水産省のHPを見ると現場のニーズとして「孵化前の卵の段階での雌雄鑑別技術の確立」の技術を募集中。。
今のところ避ける方法としては卵を食べないか、食肉もできる卵肉兼用種のニワトリの卵を買うことです。通常スーパーなどの卵には品種まで書いてないので難しいですけどね。

◎蜂蜜はやはり蜂の労働環境が過酷であること。一生懸命働いて集めたハチミツを根こそぎ持っていかれてしまうなんてひどい。。稼いでも重い税金や年金やローンがのしかかってくる、現代の日本人はちょっと蜂に共感しちゃいますね。
他にも「蜂群崩壊症候群」など原因不明に突然数が減ることから蜂を保護するためにも避けているようです。

ただ「野菜の生産過程でも農薬で虫たちを大量虐殺してるんじゃない?」とも思いますよね。逆に「花粉を運ぶ蜂は植物の繁栄に欠かせない益虫だけど農作物に付くのは植物も病気にする害虫が多く、扱いが違う」という見方もあり、この論争はキリがなさそうだし難しいです。虫の種類による差別だ? そりゃトンボとゴキブリじゃ家に入ってきたときの対応は違うよねぇ。

こちらはやや緩めのなんちゃってベジタリアン。タリアンがゲシュタルト崩壊してきましたよ。
細かい説明はwikipediaを見てね。

 

「ベジタリアンになりたい」とか言ってますが実は今のところ私はベジタリアンではありません。
特にヴィーガンはそれ用の食料品が少ない上にお高い。。日本でヴィーガンを徹底してやるのは金銭的に余裕がないと難しそうです。
「ラクト・ベジタリアン+魚介類」あたりでいこうかしら。
でも人と食事する時は同じものを食べるだろうし、卵が入ったマヨネーズやアイスクリームも食べるかも。。コンソメとかガラスープも使っちゃうかもなあ。
成長期の子供とか激しいスポーツをやってる人なども私は動物性タンパク質は必要だと思います。

分類にはあまりこだわらず、各々が買うもの・食べるものの生産過程を知った上で、もやもやしたり納得いかないものは避けたり減らしたりすればいいのではないでしょうか。
良好な環境で飼育された家畜の肉だけを食べる、なんてことも動物福祉や環境改善に効果があります。あくまでも無理のない範囲でね。
納得したものを選ぶためにもそれぞれの食材の生産の過程を知ることは大事だと思います。

参考資料(HP)
◎wikipedia(菜食主義)
◎アニマルライツセンター
 アニマルライツセンター Hope for Animals オスは処分
◎フルーツ研究家 中野瑞樹(youtube)
 中野瑞樹インタビュー(J-WAVE NEWS)
◎名糖産業HP 酵素
◎農林水産省 技術イノベーションに係る現場ニーズ一覧

何歩先行く? スイスの動物福祉法


今年の初め頃にニュースで見た方も多いと思いますが、1月にスイスで「生きたままのロブスターを茹でててはいけない」という法律が成立しました。
「ロブスターは痛みを感じる高度な神経系を持っている」と言われる研究結果を踏まえて、今後は茹でる前に即死させるか、電気ショックなどで失神させてから調理しなければなりません。
今回の法改正ではその他にも、ロブスター以外の甲殻類も生きた状態での氷漬けは禁止され、海水につけたまま運送や保管をしなければならなくなりました。
内陸のスイスに海水ごと運ぶのは、コストがかさみそうだし鮮度も微妙そう。。
そもそもスイスは1991年から鶏のバタリーケージを禁止している、動物愛護では何かと進んだ国なのです。

スイスの動物福祉と権利法では2008年からブタやモルモット、インコ、金魚などの単頭飼育が禁止されています。もともと集団生活する動物なのに、仲間と関わらせてあげないのは適正飼養ではないというわけです。
でも、もしモルモットを2匹飼ってても必ずどちらかが先に死んでしまいますね。そんなときのためにスイスにはモルモットの貸出業者まであるのです。

その他にも
・フックを使った釣りをする人は人道的な方法で釣るための(?)有料講習を受けなければならない。当然キャッチアンドリリースや生き餌は禁止です。
・犬のオーナーは犬の行動・心理についてそれぞれ有料講習を受けなければならない。
・病気の金魚は化学物質で安楽死させなければならない。
と様々な動物愛好家の意見が反映されているのが推測できます。

もちろん、実際ペットを飼っている家が一軒ずつチェックされることはないので、努力義務的な感じだと思いますが、モルモットやインコにとって孤独がストレスになるのだ、と国民に周知されるだけでも動物への理解が深まりますね。

日本の動物愛護法では魚類は対象になっていませんし、住宅事情もあって実現が難しいものもありますが、いずれ動物福祉の水準が上がってくれば、踊り食いなどは当然ながら、いつかアサリの酒蒸しも食べられなくなるのかもしれません。(冷静に考えるとアサリも可哀想な気がします)

一方で、スイスの一部の人達は猫の毛皮に触れることでリウマチの痛みが軽減できるといまだに信じていて、国内では数年前まで猫の毛皮のコートや毛布が合法で取引されていたようです。

日本でも未だに犬猫、蛇の皮などで楽器を作っているし(中国等からの輸入ですが。楽器は動物材料のものが結構多い)古くからの伝統は慣れちゃってるので案外見落とされがちなのかも。

「野良猫が猫取り業者に捕獲されて三味線にされている」という都市伝説(?)もあるようですが野良猫は皮に傷がついていて使い物にならないらしいです。
この辺の真偽は不明なのですが。。実際今売ってる三味線はほとんど合皮か犬皮です。
最近はまた和楽器がブームになってきているので、もし何か始めようという方は是非合皮でできた楽器で練習したらいいと思いますよ。
音が違うって? 知らんがな^o^

参考資料(HP)
Switzerland’s Cat-Fur Trade
Swiss law orders pet buddy system
This Country Is Making It Illegal to Boil Live Lobsters

獣医師セミナーに行ってきた

そして明大祭の2日後、今度はカワイの獣医師セミナーに行ってきました。1ヵ月も前ですね^^
テーマは『うさぎのエンリッチメントな飼い方』。食生活と飼育環境についての2部制で、それぞれアメリカの獣医師でOXBOW専属獣医ディレクターのDr. Micah Kohles(マイカー・コール)さんとエキゾチックペットクリニック院長の霍野先生がお話して下さいました。

 

「(環境)エンリッチメント」とは、wikiによると-「飼育動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らして、動物の福祉と健康を改善するために、飼育環境に対して行われる工夫を指す。飼育動物の福祉を向上させるもっとも強力な手段の1つとされる。」-だそうです。

ペットに限らず、檻や施設に入れられている動物は食事や命を狙われる心配をしなくても済む反面、閉ざされた狭い世界での単調な生活は程度の差はあれどストレスにもなりえます。

酷くなると壁に身体をぶつけたり、自分を噛んだり毛を抜いたりといった自傷行動、自分の尾を追いかけ続けたり、首を振ったり檻を行ったり来たりする常同行動などの問題行動を起こすことも。
そこで人間が変化や刺激を与えることで、限られた空間の中でも感覚的・身体的な活動性をアップさせて退屈しない充実した生活をしてもらおうというものです。

ペットであれば既にやっている人も多いと思いますが、例えばケージにハウスやオモチャをおいてみたり、散歩に連れて行って他の動物に触れ合わせたり、窓を開けて外の風を入れたり日向ぼっこさせるだけでも刺激になる、そんな感じです。

その中で私が一番興味を持ったのが「コントラフリーローディング(contrafreeloading)」というもの。
今は動物用語というわけでもないですが、もとは動物心理学者のグレン・ジェンセンという人が作った言葉で、Contra=逆・反対/freeloading=飲食物などを人にたかる、といった意味。日本語では「逆たかり行動」と呼ばれています。多くの動物が、ただで食事を与えられるよりも、何らかの努力の対価として食事を得る方法を好むといった現象のことです。

決められた時間に決められた食事を食べるのではなく、自分で採餌(さいじ)行動ができる方が動物にとっても好ましい、ではそれができるように飼い主が工夫してあげようと言うのです。

Dr.コールが見せて下さった動画には、屋外に作った「ピタゴラスイッチ」のような装置の中をリスが駆け抜けてエサにたどり着く様子や(このリスは自然界でもっと簡単に木の実を取れるのにこの面倒な装置が好きらしい)、ハムスターのケージの中に生きたゴキブリ(!)を入れて捕食させたりしてる様子が映ってました。(これはハードルが高いよ。。)

でもこういうの面白い! と思った私に数日後、タイミングよく娘がInstagramで@puffytailsという方の10月16日の動画を見せてくれました。


可愛いうさぎ達とイケメンが同時に楽しめるというちょっとズルいアカウント。

メッチャ楽しそう。ということで数日後には早速オモチャをゲットしてブン所長で実験しました。
所長は遊び好きなのですぐにノッてくれました。似たような動画が続きますがすみません^^

1. まずは3個から。1番下のカップにオヤツやペレットを入れてます。

2. そして増えていくカップに手こずるブン所長。日々練習だ。。

3. 3週間もするとかなり手際が良くなってきました。

これは「コントラフリーローディング」の効果にはなっているのか、私が芸をさせたいだけか(笑)はともかく、音を聞いて張り切ってやるようになったのでまあ楽しんでくれているのだと思います。少しは研ぎ澄まされたかな?


日本は住宅事情によってもできることが限られるので、例えば牧草を敷き詰めたところにペレットなどをパラパラと撒いて探させたり、下に隠して匂いで探させる、部屋のあちこちに分けて置いて食べるために移動させる、などでも充分な効果があります。

このように食事を分散させる与え方は「scatter feeding(散布給餌?)」と言って
◎メリットは
・満腹になると探すのをやめるので肥満の防止になる
・動物がエサを探しまわる自然な行動が促進される
・エサを探すことによって脳が刺激され、問題行動の原因にもなる退屈を防止する
など。

探すことによって運動量も増加し、見つける楽しさはストレスの発散にもなると思います。

◎デメリットは
・食べた量の把握が難しい。普段より食事量が減っていても気づきにくいので不調の時に対応するのが遅れてしまう
・複数のペレットなどを混ぜてあげている場合、選り好みして好きなものばかり食べてしまったりと、栄養バランスの管理が難しい

など。

それぞれの子の性格にもよりますが、色んなイベントを考えてみるのも楽しそうです。
モルモットやうさぎなどの草食はそもそも肉食動物ほど「エサを取りに行く行動」はしませんし、ストレスになってしまうと本末転倒なので楽しめる範囲でどうぞ。

それにしても「退屈」のケアまでしてもらうとは最近の動物福祉は進んでますね。

ちなみにこのコントラフリーローディングは猫には通じないようで、猫の皆さんは与えられた食事の方を選ぶのだそうです。猫の皆さんもレッツ・トライ!


穴からペレットが出てくる犬のオモチャ。手も使って器用に転がしてます。

参考資料(HP)
BOWL OR SCATTER FEEDING?

学園祭に行ってきた 2

先日の講演会の話の続きです。

杉本さんの講演の後は神野あきらさん、平林雅和さん、和﨑聖子さんを交えて4人でのパネルディスカッションが行われました。始めに神野あきらさんがアメリカの愛護活動についてのお話をして下さり、面白かったので書きます。

神野さんは現在メリーランド州ボルチモアで動物福祉NPO団体「Sunshine Smile」の代表として活動されています。
もともと動物が好きだった神野さん。ご家族の仕事で渡米した当初は英語があまり解らず、地元の無料の英語クラスで勉強していたそうなのですが、しばらくすると無料の期間が終わってしまい、その先のクラスは有料ということに。
「せっかくアメリカにいるのにお金を払ってまで英語を習うのはもったいないな。」と思っていたところ、知り合いに「動物ならあなたが日本語だろうと英語だろうと関係ないよ。」と薦められて動物のボランティア団体に参加したのが愛護活動に関わったきっかけだそうです。

ボルチモアはアメリカの中でも治安の悪い地域で(総犯罪件数は全米平均の約2倍、殺人事件は約7倍!)、いまだにピットブルやロットワイラーを使った賭博目的の闘犬(ドッグファイト)も行われています。
現在、闘犬はアメリカ全土で禁止されているため摘発されれば重罪なのですが、闘犬賭博はギャングやマフィアの資金源になっていて、割と手軽に始められる上に犬の飼育も試合も人目につかない室内で行われるため、なかなか発見が難しいそうです。

闘犬目的で飼われた犬たちはずっと自宅の地下室などに閉じ込められたまま育てられ、闘志を煽るために狭いケージに入れられて棒で叩いて脅かされたり、ウォーキングマシーンなどで無理なトレーニングをさせられたりして肉体的にも精神的にも追い込まれた状態で育ちます。

中には過酷なトレーニングで亡くなってしまう子も。病気になっても治療を受けることはありません。
そうして試合に出ても怪我を負ったり老いたりして使いものにならなくなれば撲殺されてしまい、レスキューされてもピットブルはしつけのし直しが難しいことから殺処分されてしまうなど、闘犬の一生はどのみち悲惨なものだそうです。

ときには試合に出た犬同士を興奮させるために、小型犬や猫が投げ込まれることもあり、里親募集で貰われた猫が犠牲になることもあるそうです。
そんなドッグファイトを見学に来る子どもたちに動物愛護の心は育ちづらく、その負の連鎖を断ち切りたい、子供のうちから動物と正しく関わる情操教育が重要だと考えたことが今の団体立ち上げのきっかけにもなったとおっしゃっていました。

神野さんは保護猫や地域猫活動にも長年力を入れており、不幸な猫を減らすためにTNRや餌やりだけでなく、猫を通して動物福祉に関心を持ってもらい、地域住民全体の意識を変えていこうと活動されています。

ボルチモアは貧困地域でもあるため、神野さんの団体はときどき無料で飲み物と食べ物を配るイベントを実施し、それを目当てに集まってきた人たちに啓発活動を行っています。
特に食べるのに時間のかかる「ドーナッツを食べはじめたらチャンス!」だそうで、「それを食べてる間だけ話を聞いて!」と言って、ペットを飼っている人たちには無料の不妊手術の紹介や、マイクロチップ・室内飼育の重要性、適切な飼育方法(太らせ過ぎはダメなど)の説明をされているそうです。

最初は話が理解できないといった反応の人たちでも、中には「無料で手術できるなら。。」と言ってくれる人もいて、次第に神野さんの行っているTNR活動など不幸な野良猫を減らすことにも理解を示してくれるというわけです。
逆に闘犬や虐待の情報などをリークしてもらうこともあるとか。

保護猫の中には家庭で飼われるのに向かない猫もいて、そんな猫たちは農場で働く「バーンキャット」として、納屋などを寝床にしながらねずみ番として働き、そのかわりに食事や医療の提供を受けるという形で引き取られて行く子達もいます。


日本、特に東京に住んでいると治安がいいのはもちろんですが、闘犬やバーンキャットなど初めて聞くような動物事情が多く、国や地域が違えば福祉の問題点も違ってくるものだなと思いました。アメリカ有数の犯罪地域で活動されているだけに話の内容は重かったのですが、神野さんの明るいキャラクターと軽快な話しぶりに引き込まれ、暗い気持ちにならずに最後まで楽しめました。

私から見ても華奢な神野さんが、ガタイのいい白人や黒人に混じって地域活動したり団体を運営している度胸とパワーは素晴らしいです。かなり目立つだろうに、大丈夫なのかな?心配。。

動物虐待の多い地域ではその他の犯罪も多く、シカゴ警察によると3年間で動物虐待の罪に問われた人のうち、65%には人間に対する余罪もあったそうです。
動物の問題を解決するには、まず人間側の問題を解決していかないといけないともおっしゃっていて、まさにその通りだと思いました。

神野さんは東日本大震災のときも被災地動物情報ブログを立ち上げたり、日本のボランティアとも積極的に関わっていらっしゃいます。
Happy Go Lucky Animal Rescue In AmericaのHPでは上記の話の他にも神野さんの読み応えのあるブログが掲載されていますので是非読んでみて下さい。


日本での闘犬は自治体によっては禁止されていますが、未だに行われている地域もあるようです。遅れてますね。。
高知の「とさいぬパーク(土佐闘犬センター)」は観光向けに闘犬を行っていましたが今年の5月に閉園しています。(その後の犬たちも無事らしい)
禁止しなくてもこんな風に悪習が廃れていくのは嬉しいことです。

youtubeにあった閉園前のとさけんパーク。殺し合ったりまではしないようですが。。

※写真と本文は関係ありません。

学園祭に行ってきた 1

ここのところお客さんが少なく(笑)せっかくなので2件ほど講演会を聴きに行ってきました。
1件目は明治大学の動物愛護サークルtoutouさんが明大祭で主催した講演会とパネルディスカッション。
講演は動物愛護団体Eva代表の杉本彩さん
パネルディスカッションは神野あきらさん(アメリカ動物福祉NPO団体SUNSHINE SMILE代表)、平林雅和さん(オールペットクリニック獣医師/院長)、和﨑聖子さん(特定非営利活動法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)事務局長)&杉本さんというメンバーで行われました。

ちなみに会場になった明治大学和泉校舎は、私が3年前に愛玩動物飼養管理士の試験を受けた時の試験会場だったりします^^


最初にお話をしてくださったのは杉本さん。

学園祭の女王と呼ばれた一時期以来、29年ぶりに学園祭に呼ばれたそうで「ボンテージで歌っていた頃とは全然違うスタイルで久々に戻ってきました。」と笑っていらっしゃいました。

ご自身も3匹の犬と8匹の猫の里親になっている杉本さん、講演では、動物愛護センターで犬の殺処分に立ち会ったときの不安そうな犬たちの様子や、センター長さんの辛そうな様子にショックを受けられたお話にはじまり、

◎年々、犬猫の殺処分数が減少している裏で、最近問題になっている引き取り屋のこと。
 (再び繁殖業者に売られたり、劣悪な飼育環境について)
◎ブリーダーからオークション・バイヤーと流通していく過程で死ぬペットが相当数いること。
 (業者の自己申告なので報告されていないことが多い)
◎多頭飼育崩壊の問題。
 (不幸なペットを減らすために不妊去勢が大事であること)
◎ふれあい動物たちのストレスに対する配慮が足りていないこと。
 (拘束の禁止・飼育スペースの基準値を設ける・温度管理・騒音への配慮・正しい扱い方の指導など)
◎56日(8週齢)まで展示販売の禁止の徹底。
◎動物虐待に対する刑罰が軽すぎること。
◎動物取扱業の飼育施設の大きさや、繁殖回数の制限などの数値基準がないこと。

など、動物福祉の点で問題になっていることをお話されていました。

最近ではテレビ番組で引き取り屋や多頭飼育崩壊などの特集が組まれることもあって、少しずつ動物業界に疎い一般の人達にも問題点が周知されてきている(といいな)のではないでしょうか。

動物福祉の考え方は下記にある「5つの自由」が広く認知されています。
1.飢えおよび渇きからの自由(給餌・給水の確保)
2.肉体的苦痛と不快からの自由(適切な飼育環境の供給)
3.苦痛、損傷、疾病からの自由(予防・診断・治療の適用)
4.正常な行動発現の自由(適切な空間、刺激、仲間の存在)
5.恐怖および抑圧からの自由(適切な取扱い)

そして杉本さんいわく、動物虐待および虐待が疑われるものを発見した時にはとにかくアクションをおこしてほしい、飼い主さんに交渉して改善されなければ警察、愛護センターや地元の保護団体などに相談してほしい、警察はなかなか動かないけど何度も掛け合ってほしいとおっしゃっていました。

そして、来年の平成30年は動物愛護法改正の年なので、是非上記のような問題を改定していきたい、動物愛護法は議員立法なので議員の方達に対する働きかけが大事だと、最後まで熱い想いを語っていらっしゃいました。

何となく杉本さんの話を聞きに来てたのは、既に動物愛護の意識の高い人が多そうな感じでした。
(ただのファンと思われるオッサンもチラホラww)
今後は、あまり動物に興味のない人にも動物福祉が当たり前の意識として広まって、動物の地位が向上していくと嬉しいです。

後半のパネルディスカッションについてはまたそのうちに、、書きたいな。


それにしても虐待の定義は難しいです。テレビで太り過ぎのペットをおもしろく紹介していることがあり、あれも酷いものは虐待という人もいますが、大体の飼い主さんはかなりの愛情を持って世話しているので、虐待とは違うかな。。私としては。

愛情があるけど無知の結果ペットに可哀想な思いをさせてしまう、というのは割とありがちです。もちろん無いのが理想ですが。
私も先代うさは不正咬合にさせてしまったし、現在やっていることもベストじゃないかもしれません。

厄介なのが、最低限のお世話がされているけど愛情が感じられない場合です。(学校の飼育小屋などでも見られるヤツ)
注意することで飼い主のプライドを傷つけてしまい、話がこじれたり、変な人と思われて警戒されてしまうかも。ペットを隠されでもしたら、もうなす術がありません。

せっかく救おうとしたのに更にその子をを不幸にしてしまう可能性も出てくると思うと、なかなか踏み出す勇気が出ません。しかもネグレクトなどの「やっていないこと」は証明が難しい。。

人間の虐待やDVの場合でもうまく解決しないのに、自由もなく言葉も話せない動物では更に厳しそうです。疑わしきはとりあえず一時的に強制保護できるような仕組みになるといいなあ。


ところで、パネルディスカッションでJAVA事務局長の和﨑聖子さんが紹介していましたが、JAVAをはじめとした3団体で来年の法改正に向けて署名を募集しています。
「あまり愛護法には詳しくないし、議員さんに直接意見書なんてハードルが高い、でも動物のために何かしたいな。。」という方(私も)はこちらの署名用紙を利用してみてはいかがでしょうか。

動物愛護法2018年改正へ向けて署名にご協力ください<国会請願署名>

DLして内容を読み、賛同できる方は署名をして郵送するだけです。FAXはダメみたいですよ。
2018年1月15日着まで受け付けているみたいなので是非利用してみて下さい。