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うさぎの被毛遺伝子

先週泊まりに来てくれたピップくん。この写真は8月に来てくれた時一緒になったハッピーちゃんとのツーショットです。ハッピーちゃんのほうが2歳年上ですが2人は同じペットショップチェーンの出身。

私が勝手に「2人は姉弟!」と言っているだけなのですけどとてもよく似ています。

地方のブリーダーの元で違う年に生まれて、それぞれ面識のない飼い主さん達の家の子になった姉弟が、もしここでたまたま偶然出会えたのかもしれないと思うと興奮してしまうのです。

「姉弟」と仮定して。。ですが、ご両親はどんなうさぎさんたちなのかな?

うさぎの被毛の遺伝子の種類は10種類以上あり「c」アルビノ(白色・赤目)や「l」アンゴラ(長毛)、「d」ディルーション(毛色を薄くする)などが複雑に組み合わさって色を決めています。その中でパターン(模様)遺伝子(Aシリーズ)の表れやすさは アグーチ(A)> タン(at) > 単黒色(a)となっています。
「アグーチ」とは一本の毛が3色以上に色分けされている毛色(チェスナットやチンチラなど)、「タン」は背中側は濃い色で、目の周り・顎の下・腹が白くなっている毛色(マーチンやオター)を表しています。

記号 遺伝子名/遺伝子効果
A light belied agouti/灰色、腹側は白(アグーチ)
at black and tan/背は黒、腹は白(タン)
a non-agouti/単黒色
・・・以下略
町田修「新うさぎの品種大図鑑」より一部抜粋

私は遺伝子についての知識はないのですが、「a」は「潜性遺伝子」なので持っていても表れにくい遺伝子ってことですね。両親からそれぞれ「a」遺伝子をもらって「a-a」の組み合わせにならないと子供は黒単色になりません。
(最近、日本遺伝学会が遺伝子の表れやすさを「優性」→「顕性」、「劣性」→「潜性」と変えたようなので早速使ってみます^^)

もちろん両親ともに「a-a」遺伝子を持つ黒単色なら子供は全員黒単色なのでわかりやすいですが、ハッピーちゃん&ピップくんの場合、片親もしくは両親ともに「a」を持った違うカラーの子だった可能性もあります。この2匹からは両親の毛色の推測は難しい、というか無理ですね。
ピップくんはややシェイデッド(鼻・耳・手足・尻尾の色が濃いグラデーション)っぽいですがこれはまた別の遺伝子、恐らくE(Extention)シリーズの作用かな?と思います。


里親募集でお世話になっているイブさんの飼っている元保護うさぎクロちゃんは「ブラックシルバーマーチン」というタン系(at)のカラーなのですが、保護された後で産んだ6うさちゃんの内訳がチンチラ3匹・単黒色3匹と、全員が母親のクロちゃんとは違うカラーになっています。
単黒色を産んだのですからクロちゃんは「at-a」の組み合わせの遺伝子を持っているということになります。

ちなみにそのうちの1匹がうさの木に時々来てくれるリリーちゃん。
チンチラの被毛のアグーチ(A)はお父さん側から受け継いだのでしょうか。

リリーちゃんはお母さんのクロちゃんより体も大きいし、お父さんは体の大きいチンチラだったのかもしれません。

所長もアグーチのチンチラですし、野うさぎの毛色のチェスナットもアグーチ、大久野島のうさぎさんたちもアグーチが多いです。

どんな毛色で生まれるかは野生のうさぎにしてみれば命にかかわる重要なことですもんね。
こうした保護色っぽい茶系やグレー系のアグーチが顕性で現れるのは当然かもしれないです。

 

(色々書いてますが、私の調べた範囲の予想なので間違ってたらお教えくださいm(_ _)m)


それにしても被毛の遺伝だけでも複雑なのに、耳が垂れてるとかお尻が丸いとか温厚で懐っこいとか。。体格や性格や体質の遺伝子まで考慮して交配させているのだから、ブリーダーさんはきっと相当勉強していらっしゃるんでしょうねえ。

最近では帝王切開でしか出産できないブルドッグや、骨軟骨形成不全症のスコティッシュフォールドなど、「人間から見て望ましい」身体的な特徴を重んじた交配の結果、遺伝子疾患に苦しむペットが増えていることが問題になっています。要は奇形や病気なのだから治療したり心配するところであって、可愛い~なんて言って増やしちゃマズいのですね。

今回、うさぎの遺伝子について調べている中でも、純血のネザーランドドワーフ同士をかけ合わせると1/4の確率で「ピーナッツ」と呼ばれるたいへん小さな子が生まれて、数日で亡くなってしまうのだと知り、悲しくなりました。

人間でも昔はハプスブルグ家のように近親結婚を繰り返し、不正咬合や虚弱体質、知的障害を持った子供が続出した歴史があるようです。
今では人間の近親者同士の結婚は当然のように避けるのに、これが動物になると急に「血統の保持」とやらで近親交配が素晴らしいことのように扱われるのは謎です。

遺伝的な特徴を増幅させればプラス面もマイナス面も顕著になり、いつかその生物の「自然な状態」から離れて元に戻せなくなってしまうのでしょう。
みてくれ重視で作為的に産まれる不幸な動物達が今後増えませんように。

参考資料(HP)
町田修「新うさぎの品種大図鑑」
Nature Trail/Rabbit Genetics
ブルドッグwiki
スコティッシュフォールドwiki